蝋燭の、橙色した炎が揺れた。
 それによって細い蝋燭二本で支えられているこの部屋の仄かな灯りは、とても頼りないものである――ということを思い知らされる。

 その部屋には、何も無かった。
 あるのは黒く、細長い燭台に灯る炎が二つ。それだけである。
 だが、そんな部屋に一人の少女が居た。いや、具体的に言えば一人の少女と一羽の鳥。

 燃えるような黄昏から息を潜めたくなる宵闇へと移り変わる瞬間を切り取ったかのごとき少女の長い髪は、毛先に向かうにつれ緋色から漆黒へとかわっていく。伏せられた瞳を守る睫毛も長く、少女の整った顔立ちを際立たせていた。

 一瞬、何かに反応した少女が瞳を開く。

 部屋中を優雅に舞い飛んでいた、尾の長い美しい鳥が、不安そうな少女へと寄り添う。


「――――始まって、しまう」


 消えた筈の《焔》が再び燻り始めた。
 運命が歪んでいく。


 ――――世が、動き出していく。


「どうして……」

 少女は哀しげに目を伏せる。そして手を合わせ、指を組み祈りを捧げた。
 しばし祈った後、再び目を開いた少女の顔は未だ、憂いをたたえたままだ。

「天をも揺るがすこの力……これは、一体」



「知りたいか?」



 少女は驚いた。
 無理も無い。自分以外は傍らに羽根を休める鳥しか居ない、そして常人の入れる筈の無いこの部屋で、第三者の声を聞いたのだから。
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